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6.有機太陽電池への応用 (2011-)
Application to organic photovoltaics
自発的な水平配向による吸収増加
有機ELのみならず、有機薄膜太陽電池にとっても水平配向は大きな利点を有しています。入射光が基板面に垂直に近い向きで照射される場合、光を吸収する分子の遷移双極子モーメントが基板面に対して水平(入射光電場に対して平行)であるほど、膜の吸光度が大きくなります。また、有機EL同様、厚み方向の電荷輸送・エネルギー移動(励起子拡散)も起こりやすくなると考えられます。
有機薄膜太陽電池は、有機ELほど強い電界を必要としないため、有機ELに比べ膜の平滑性に関する制限が厳しくありません。そのため、有機薄膜太陽電池には多結晶材料が多く用いられています。平面的な多結晶材料の分子面を基板面に水平に配向させることができれば、上記のとおり光学的にも電気的にも有利になりまが、平面的な多結晶材料の多くは、分子間のπ-π相互作用が強いため、分子面が基板面に対して垂直に近い形で配向します。そのような分子を基板面に対して水平に配向させるためには、分子のπ電子と相互作用が強い材料をあらかじめ基板上に成膜しておくことが必要になります。
一方、非晶質材料を利用すれば、「非晶質膜中の分子配向」に記載したとおり、分子形状の異方性のみで分子の遷移双極子モーメントを水平に配向させることができます。分子の自発的な配向を利用するため、下層の制限もありません。さらに、有機ELのドープ膜内同様、p型・n型材料を混合した太陽電池のバルクへテロ層内においても配向することが期待できます。さらに、多結晶膜に見られるような粒界を持たず、π電子と電極とが直接接触する配向であるため、直列抵抗の低減(fill factorの向上)も期待できます。
我々は、高効率有機太陽電池に非晶質膜が用いられている例を調べ、その膜中の分子配向を調べたところ、非晶質p型材料が平面的な分子形状を持ち水平配向性が高いことが分かりました。また、汎用的な太陽電池n型材料であるフラーレンC60、C70と混合したバルクへテロ層内でも配向することが分かり、有機薄膜太陽電池においても非晶質材料の水平配向を有効に利用できることが明らかとなりました。
さらに、それぞれの薄膜の屈折率・消衰係数とその異方性を正確に評価し、光学異方性も加味して光学計算を行うことで、太陽電池の外部量子効率を予想したり、励起子拡散長を見積もったりすることができます。このような理論的な取り扱いにより、デバイス内部での光・励起子のふるまいについて情報を得ることができ、デバイス設計を効率的に行うことができます。
(本研究は山形大学Z. Hong准教授、城戸・笹部研、UCLA Y. Yang教授との共同研究です。)
D. Yokoyama et al., Sol. Energy Mater. Sol. Cells 98, 472-475 (2012)
Z. Wang, D. Yokoyama et al., Energy Environ. Sci. 6, 249-255 (2013)